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翼をください(vol.3)
--- 2007年MCFAJ第2戦(MX408)参戦 ---
【公式練習】
ついにその日はやってきた。
まずまずの天候で、気温もそれほど低くない。
今回は、ほとんどのチーム員が前日に練習走行をしていたので、全員が第1パドックに場所を確保することができた。
マシンをトランポから下ろしたら、監督・sig氏と一緒にコースを歩いて下見する。
路面はきれいに整備され、前日の散水のため少し湿っているが、ほぼベストコンディションだ。
バイクで走っていると一瞬で通り越してしまうジャンプも、自分の足で歩くととても大きく長く感じる。
「こんなに長い距離を飛んでいるんだ・・・本当に大丈夫か?」
改めて見ると、自信を失いそうになる。
開会式とライダースミーティングを終え、公式練習に入る。
例のセクションは、やはり混雑していて飛ぶ事ができない。予選でぶっつけ本番か。
いつも私と同じペースで、低レベルのバトルを繰り広げるレディスクラスRM125のA井さんに遭遇。
私が集団にのまれてモタモタしていると、彼女はサクッと抜いてとっとと行ってしまった。
やはり、飛ぶだの飛ばないだのと躊躇している間に、とっとと左ルートをなめて通過した方が結果的に速いのだろうか?
【ノービス250予選】
今回も予選落ちは2・3台程度。だが、いつもの事ながら私が落ちる可能性はかなり大きい。
グリッド抽選は真ん中くらいの番号を引き当て、選んだポジションはアウト側のほぼ中央。
15秒前のプレートが倒れ、ギヤを2速に入れてクラッチは2本指で握る。
そして5秒前。
今回、この時間表示について分かった事がある。
このプレート、ライダーに向かってばん!と出した後、パタンと水平に倒す動作をする。
15秒前のプレートは、ばしっ!と前に出した時点でカウントダウンを開始。
しかし、5秒前のプレートは、パタンと倒した時点から数えているようだ。
つまり、プレートを出す人と、スターティングバーを倒す人の、数えるタイミングが違うのではないか?そんな気がしてならない。
以前からMCFAJに参戦している方々、そこらへんはどうなんでしょう?
で、頭の中でカウントダウンしつつ、バーに注目。
微妙にクラッチミートしながらブレーキで抑え、いざバーが倒れてブレーキ開放!アクセルオープン!
失速する事はなかったが、いいスタートとは言えず、集団にのまれる。目の前にはチームメイトのsig氏がいた。
どこをどう走ったか覚えていないが、転倒しているライダーを何人か抜いたのを覚えている。
だが、結局いつものようにほぼ最下位まで下がった。
少し前を走るライダーが、例のリズムセクションの右ルートをなめて走行した。
「ここだ!」
私は意を決して、ジャンプの体勢に入った。前走車はすでにセクションの後半に達しているので、追突する危険はない。
前日の練習と同様、勢いをつけて1つ目のジャンプを飛んだ。
「よし、いける・・・」
そして、着地と同時に2つ目のジャンプ。
「届け・・・あの谷間の向こうまで・・・届いてくれ・・・」
ずばっ・・・!
「成功だ!やった、やったよ!ちゃんと飛べた!」
それまで、20メートル近くあった前走車との距離は、一気に数メートルにまで詰まっていた。
やはり、ここでの速度差はかなり大きいようだ。
これは大きな武器になると確信した。
が・・・所詮ジャンプが飛べたところで、その他の要素・・・つまり、コーナリングとか直線の速度の乗り、ブレーキング・・・これらがまだまだ『ど素人』レベルの私は、次第に離されていった。
自分は今、どのあたりの順位を走っているのだろうか?
レースの受付時に配られたパンフレットには、各予選は20台出走して15台が通過と表記されているが、締め切り後に遅延エントリーした人はパンフレットには載らないし、エントリーしたものの何らかの理由で出走しない人もいる。
なので、実際には何人が予選で落ちるのか分からないまま走っていた。
ただ、転倒した何人かには抜かれていないので、もしかしたらギリギリで通過できるかもしれないという思いで走り続ける。
自分のポジションが分からないまま一人で周回を重ね、最終ラップ。
左下りコーナーを駆け下り、新設されたテーブルトップを飛び越し、勢いをつけて5連ジャンプを2連×2発と余り1個という感じでクリア。
そのまま何の気なしに、勢いに任せてアウトへ振ってしまった。その時!!!
不意にインを突いてきたマシンが!!!
「な・・・なにぃ!!!そんな、バカな!!!」
この最終コーナーは、手前の5連ジャンプを2連+3連もしくは3連+2連というように、2回でまとめて飛んでしまう上級者ならばアウト側のバンクを使うしかないのだが、私のように3回に分けて飛ぶ場合は充分インにつく余裕があるため、とっとと減速してインに入った方が、ダラダラとアウトまで遠回りするよりも速い事が多い。
私のインを突いてきたマシンも、タイミングからしてかなりヤバイ状況である事が、バンクの中盤にいた私には直感的に分かった。
大外からアクセルを開けて、アウト側いっぱいに立ち上がる。
その時、インを小さく回ったそのマシンはすでにフル加速体制。
私の方がいくらかスピードが乗っていたので徐々に差は縮まる。が、ゴールラインはすぐそこに・・・
「行け!間に合うか!?もっと・・・もっと加速しろ!YZ-F!!!」
イン側のマシンもスピードが乗ってきて、その差が縮まらなくなってきた。
「まずい!追い抜けない!」
ゴール!!!!!
「ま・・・負けた・・・」
私を抜いたその彼は、ゴールラインを過ぎてガッツポーズ。それと対照的に私はがっくりと肩を落としてパドックへ戻った。
すっかり意気消沈していた私だが、一応・・・というか、あきらめきれない気持ちで掲示板に貼り出された予選結果を1人でそっと見に行った。
「あ・・・・・・あぁ!?なんだよ、おい!通っているじゃないか!」
予選通過は15位まで。16台が完走し、私の順位はなんと15位。ぎっりぎりのセーフ!で予選通過!
あまりのうれしさに、横にいた見ず知らずのライダーの肩に手をかけ、
「やった、やったよ!予選通りましたよ!」
「は・・・はぁ・・・?」
「今までずっと予選落ちしていたんです。今回初めて予選を通りました。
あ、いや、すみません、うれしくって、つい・・・ははははは・・・」
「ぽかん・・・」
その場には私とその人しかいなかったので、ついつい声をかけてしまったが、いきなり肩をたたかれて話しかけられて、1人で喜んでいたんじゃ・・・その人もさぞかし困ったことだろう。
何はともあれ、MCで初めて予選を通った!
決勝レースを走れるんだ!

【プレノービス決勝】
ノービスでポイントが取れないライダーを対象としたこのレース、MCでは超初心者的位置付け。
今回は10台のエントリー。
グリッド抽選もまずまずだったが、台数が少ないのでグリッドは選び放題。
私は例によって、真ん中の操作室のすぐアウト側をゲット。
並んでみて感じた事。あきらかにオフビレよりも幅が広い気がする。
15秒前のプレートが出される。
そして5秒前!
「ちぃぃしまった!またしても数えるタイミングを逃した!」
そんな事はもうどうでもいいさ。
倒れるバーをひたすら見続け、反射神経に賭けるのみ!
エンジンを高回転でキープして、緊張が頂点に達した瞬間・・・
スタート!

ほんの少し出遅れたため、私の前に両側からバイクが迫ってきて、私のラインが徐々に阻まれてきた。
「させるかぁぁぁぁ!いけ〜!YZ-F!底力を見せろぉ〜!」
アクセルを絞り上げ、高回転型のYZ-Fのエンジンをレブリミッター寸前まで引っ張る!
「うおおおぉぉぉぉ!」
両側から近づいてくる2台のバイクの間をすり抜け、前に出ることができた。
最新のCRFに!?02のYZ-Fが加速競争で勝った!?
「なかなかどーして、パワー出てるじゃないか、相棒よ。」
ゆるい右コーナーを大外に振り、集団を一気に交わして2位に躍り出た。
トップのKTMには先行を許してしまったが、そのまま2位のポジションをキープして逆バンク、ステップダウンジャンプへと続く。
ストレートでのスピードの恐怖と戦いながらアクセルを開け、減速地点に近づく。
少し前に散水した水が路面を湿らせており、早めのブレーキングでもタイヤはグリップを失う。
恐る恐るグリップを探るように、丁寧に左大曲りを抜け、2連・テーブルトップと必死に飛ばすが、トップからはどんどん離されてゆく。
重点ポイントであるリズムセクションに差し掛かった時には、トップのKTMは遥か彼方。
「ダメだ・・・追いつけない・・・」
それでも自分は2位を走っているのだから、後ろから追ってくるバイクがたくさんいるはず。
弱気になっている場合ではない!ガンガン攻めるしかない!
濡れて滑りそうなインを突き、止まりそうなほど減速してクリア。
マシンが直線を向いたらアクセルを開けて、1つ目のテーブルトップに合わせて軽くジャンプ。
谷間に落としてそこから加速。ぐんぐん車速が上がり1つ目の谷越えジャンプ!
着地と同時にさらに加速。2つ目の谷越えジャンプ!
「よし・・・・・・飛べた!」
路面が湿っているのが気にはなったが、真っ直ぐ走れば問題はない。
最後のテーブルトップでラインをインに変更し、予定通りインベタで回る。
「いいぞ、このラインだ。」
おそらく、今の自分の限界・・・とまでは言えないが、自分としてはかなりよくできた周回だったと思う。
こうして2位をキープしながら周回を重ねていると、背後から迫ってくるバイクが・・・
あっ・・・と思った時には、さくっと抜かれていた。カワサキだった。

「あ・・・あれ?このバイクは!?ぬぅぅぅぅまたしてもヤツか!」
そう、このシチュエーションは、開幕戦のプレノービスのレースの時と全く同じ状況だった。
あの時も2位を走っていて、このカワサキに刺されたのだった。
「ぬおぉぉ、カワサキめ〜!離されてたまるかぁ〜!」
開幕戦のリベンジよろしく必死に食い下がるも、カワサキの方が僅かに速い。
ではなぜ1周目から抜いてこなかったのか?出遅れたのか?
抜かれてから1周する間に、数十メートル離された。
「ダメだ・・・離される・・・突っ込み、コーナリング、立ち上がり、すべてにおいてヤツの方が上だ。」
一番大きなテーブルトップを飛び、右コーナーを小さく回ると、そのカワサキはすでに次のコーナーに差しかかっていた。
彼がこのリズムセクションをどう通過したのか分からないが、少なくとも私がなめて通過すれば、その差が開く事があっても縮まる事はない。
また、後方のマシンを確認する余裕もなかったため、4位からどの程度のアドバンテージがあるのかが分からなかった。
となると、当然ここはがむしゃらに攻めるしかない。
「ようし、いくぜ!YZ-F!GO!」
気持ちは先行しているが、その時すでに体力が落ち始めていた。
また、焦りもアクセルワークをラフにさせる要因の一つだった。
「ちぃぃぃぃぃ、しくったぁ!!!」
最初の小さなテーブルトップで振られ、次のジャンプでの加速が鈍った。
やや加速不良で飛び出した1つ目の谷越えジャンプ、リヤタイヤが斜面に引っかかった。
だぎゃんぐっ!
少しバランスを崩してしまったが、次のジャンプまでに体勢を整える場所はない。
そのままの体勢で飛び出すしかないのだ。
「ええい・・ままよ!」
その飛び出し速度から、明らかに失敗ジャンプだということがわかった。
「うおおぉぉぉぉ・・・届けぇぇぇぇぇ!」
どぎゃんぐぼふっ!
大きな衝撃と共に私の体は跳ね上げられ、コントロール不能の状態で最後のテーブルトップに突入。
が、止まりそうなほど失速するも、幸いにして転倒することなくテーブルトップの斜面をゆっくり降りた。
「くぅ〜、危ないところだった・・・いや、こんなトコでモタモタしちゃいられねぇ!追うんだ!あのカワサキを追うんだ!」
すでに体力が消耗し、集中力もなくなり始めたが、それでもゴールまでは気を抜くわけにはいかない。
しかし、グリーンのバイクは影も見えないほど遠くへ行ってしまった。
逆バンクコーナーで応援してくれているチームメイトのHD氏と監督が、なにやらジェスチャーで合図している。手の平を下に向け、下げろの合図だ。
「おい、せきぴーよぉ!無理すんな!ジャンプは飛ばずになめろ!もっとペースを落とすんだ!」
「なんだってぇ?ペースを落とせだぁ?
冗談じゃない!そんな事できる訳ないぜ!後続に追いつかれちまうぜ。
一か八か、飛ぶしかないんだ。俺がアドバンテージを取れるのは、ここしかないんだ!やるしかないんだぁ!」
確かに自分としては、すでに目一杯の状態だった。
ゴーグル越しに見える私の目が、すでに正常な状態ではなくなっていたと、後にチームメイトは語った。
この時、すでにトップと2位は見えないところまで先行してしまったが、ここで後続に抜かれる訳にはいかない。
チームメイトの制止を振り払ってアクセルを開けるが、やはりバイクをコントロールできていない。
今度は、テーブルトップの飛び出しで姿勢を崩した。
「ぬおおぉぉぉぉ・・・・・・!」

着地でバランスを崩したが、次のコーナーまでにはなんとか姿勢を修正できた。
そして再びリズムセクション。
前を走るライダーはいない。落ち着いてアプローチし、加速。そしてジャンプ!
今度は大丈夫だ!
練習どおりの速度と着地、すぐに次のジャンプ。
「行け〜!俺のYZ-F!飛べ〜!!!」
完璧とは言えないが、なんとか無事に着地成功。次のテーブルトップも無難にこなし、ストレートを駆け抜ける。
ここで、前方で異変が起きた。
トップを走っていたはずのKTMが、なぜか目の前に現れた。
走り出した直後のようだ。
もしや・・・転んだのか!?
転倒のダメージが抜け切ってないのか、力尽きるまで走った結果が転倒だったのかは分からないが、1周目のスピードはその時のKTMには無かった。
「ぬおおぉぉぉぉぉぉ、KTMめぇぇぇぇ!待ちやがれぇぇぇぇ〜!」
「ちぃっ、させるかぁぁぁぁ!」

必死に追いすがるYZ-Fと、振り払おうとするKTM。
しかし、チェッカーはもうすぐそこに迫っていた。
「いっけー!俺のYZ-F!」
「甘いぜ!ぶっ飛べ!KTM!」
転んでいたとは言え、さすがにトップを走っていただけある実力者。
彼に追いつくことなくゴールラインを通過した。
「もう・・・あと、少しだったな・・・」
こうして、私は3位でチェッカーを受けた。
KTMに追いつけなかったのは残念だったが、MCFAJクラブマンモトクロスにおいて、初めての表彰台をゲットした。
【ノービス250決勝】
初めての決勝レース。
実は、昨年の開幕戦で大雨の降る中9位で予選を通ったのだが、ノービス決勝レースの前に行われたプレノービスのレースで、エンジンがかからなくなってしまいリタイヤ。
ノービスの決勝レースがスタートしてもエンジンはかからず、せっかく予選を通ったのに不出走という輝かしい経歴を持つせきぴーだった。
その件については、N田ジュニアのMさんのアドバイスも踏まえ、万全なマディ対策を施した。(OTHERの50参照)
もちろん、このYZ250Fも購入と同時に対策してある。
まあ、それはともかく、MC参戦以来、今回初めて決勝レースに出られることになった。
スターティンググリッドは、予選の順位の上位から順番に選ぶ。
予選を最下位で通過した私は、予選1組目だったため2組目よりも先に、30人中29番目に選択権が与えられる。
まあ、つまり・・・ほとんど選択の余地ナシ!
アウト側とイン側にそれぞれ空きがあったので、私はアウト側を選択した。
15秒前。断続的にアクセルをあおって高回転をキープするが、2stと違って回転の落ちが早いため小刻みなサウンドになり、気持ちを高ぶらせる。
5秒前。またしても・・・数え忘れた。
だが、意外とスタート前の緊張感はなかった。よい意味でリラックスできていたと思う。
なぜって、予選を最下位で通過したのだから、ここに並んでいるライダー達の中では、自分が一番下手くそだ。
なので、一番遅くてあたり前。1人でも2人でも抜ければ、それだけポジションアップ出来たということになるのだ。
エンジンを高回転でキープし、バーが倒れてスタート!
またもや少し出遅れた。ここから挽回できるだろうか?
しかし、さすがにプレノービスのようにはいかない。精鋭のノービスライダー達は容赦なく私の前へ出て行く。
集団にのまれて前を塞がれた時、すぐ前方にチームメイトのsig氏が・・・
「ちぃっ、ヤツもスタートをしくったか!」
「レースは始まったばかりだぜ、せきぴーさんよ。そら、ペースを上げるぜ。モタモタしてると置いて行くぜ!」
彼のRM-Zのエキゾーストノートがそう語ったかのように、一段と爆音を奏でた。
集団が逆バンクコーナーに吸い込まれてゆく。
スタート後の最初のタイトターンで、しかも逆バンク気味のため毎回1周目には渋滞が発生する。
その時、イン側のライン上で数台が転倒!すかさずアウト側に逃げる。
「ちいぃぃぃ、巻き添えはゴメンだぜ!」
一瞬だが私の視界に入ったその転倒したマシン・・・YZ450F!?
ま・・・まさか、チーム監督!?
はっきりとは確認できなかったが、ウェアの雰囲気も似ていたし、監督は徹底したイン攻め走法であることからも、その可能性はかなり高いと直感的に思った。
しかし、それが本当に監督だとしても、すぐに追いついて私を抜いていくハズだ。
エンジンさえかかれば・・・
私は必死でsig氏を追うが、彼はアバラの痛みなど忘れてしまったかのように飛ばし、徐々に置いていかれる。
例のリズムセクションも、ポンポンとタイミングよく飛び出して勢いを増す。
「なんだよ、sig氏よぉ!練習では弱気なことを言っていたのに、しっかり飛んでいるじゃないか!」
「当たり前さ!レース本番になれば、痛いだのなんだのって言ってはいられないのさ!」
そう語っているかのような彼の後姿は、少しづつ遠ざかり私の視界から消えていった。
その後は、どこで何が起こったのか、どんなライダーとどんなバトルをしたのか、あまり記憶に残っていない。
転倒車を知らせるイエローフラッグが時々出され、徐行しながら交わしてゆく。
このレースもクラッシュが多いようだ。気を付けないと・・・
5周くらいすると疲れがピークに達し、集中力がなくなってくる。
これまでは、予選の4周とかプレノービスの5周という短時間ばかりを走っていたため、ノービスの10分+2周という時間は初体験。
2年前までは、4時間とか5時間のエンデューロを1人で走っていたため、スプリントレースの10分という時間をナメていた。
エンデューロでは時々ペースを落として休んだり、苦手なセクションは無理せず通過することに重点を置いて走っていた。
もちろんスプリントレースでは、そんな事は通用しない。
エンデューロは体力を5時間持続させるよう走るが、スプリントレースは10分間で体力を使いきらなくてはならない。
時間にすればたったの10分だが、一生懸命走る10分間がこんなにも辛いとは思いもよらなかった。
コース脇で応援してくれるジュニアクラスのK暮夫妻とか、自分のチーム以外の我々にもサインボードを出してくれるN田ジュニアのM氏。
応援されると、無理してでもアクセルを開けなきゃ・・・という気持ちにさせてくれる。
残り時間もわずかになってきた頃、5連ジャンプの手前のコーナーでクラッシュ発生!
「あ・・・・・・あれは・・・・・・、チームメイトのHD氏!」
インかアウトかどちらから回避するか迷ったが、イン側にラインが1本分空いていたのでHD氏と接触しないよう注意しながら通過。
「HD氏、大丈夫か?悪いが先に行くぜ!」
「へへっ、やっちまったぜ。俺は大丈夫だ。他人の事を気にする余裕があるなら、とっととぶっ飛びな。あばよ!」
そんな雰囲気の会話を目と目で交わし、私は5連ジャンプへと消えていった。
次の周、レースがスタートしてから10分が経過し、ラスト2周のサインがオフィシャルから出された。
前も後ろもいない一人旅状態の中、後方から尋常ではない速度で近づいてくるバイクの気配を感じた。
「トップだ・・・トップグループが来ちまった・・・」
もちろん、張り合うつもりも邪魔するつもりも無い。
私はラインを変えないよう気を使いながら、アウト側に寄って走った。
「ふぅ・・・周回遅れになっちまったか・・・」
この時点で、私の『ラスト2周』はトップの『ラスト1周』に吸収され、最終ラップとなった。
「もう少し・・・もう少しでゴールだ!」
N田ジュニアのM氏が出すサインボードが視界に飛び込んできた。
『あと少し、ガンバレ!』
完全にスタミナ切れで走りがラフになっていた私に、冷静さを取り戻させるにはそれだけで充分だった。
「Mさんよ、周回遅れになっちまったよ。また恥ずかしいレースを見せちまったな。」
「何言ってやがる、せきぴーさんよ。最初から速いヤツなんざいやしないさ。今は余計な事を考えず、ゴールまでがんばるんだ。最後まで気を抜いちゃダメだぜ!」
M氏のボードには、そんな気持ちが込められていたように感じた。
S字を抜け、アップダウンを2回こなし、テーブルトップと5連ジャンプをクリア。
最終コーナーを立ち上がると最終ジャンプ。
ゴール!!!
結果は、28台が完走し25位だった。
長かった・・・たった10分のレースが・・・とても長く感じられた。
腕はあがり、のどは乾き、膝はガクガク。
だが、決勝レースを走りきった充実感が全身を包んでいた。
パドックに戻る直前、バイクを止めて振り返り、今一度コースを眺めた。
「次こそは・・・もっと高く、もっと遠くへ飛ぼうぜ、YZ-F!」
今 私の願いごとが
かなうならば 翼が欲しい
この背中に 鳥のように
白い翼 付けてください
この大空に 翼をひろげ
飛んで行きたいよ
悲しみの無い 自由な空へ
翼はためかせ 行きたい
子供のとき 夢見たこと
今も同じ 夢に見ている
この大空に 翼をひろげ
飛んで行きたいよ
悲しみの無い 自由な空へ
翼はためかせ
この大空に 翼をひろげ
飛んで行きたいよ
悲しみの無い 自由な空へ
翼はためかせ 行きたい
注.1.
今回テーマにしたリズムセクションのジャンプ、さぞかし大ジャンプに挑んだかのように書かれていますが、実際にはそれほど大したことありません。
MCFAJを走っている8割以上のライダーが普通に飛んでます。
私のようなMX初心者、しかも40歳過ぎたおっさんがジャンプに挑戦するのはこえーんだよ!
というのを分かってください。(笑)
注.2.
文中の会話や擬音には、『サーキットの狼』・『あいつとララバイ』・『バリバリ伝説』などに使われていた表現を流用しているものが多く含まれます。
注.3.
文中に現れる会話は、多少表現がオーバーになっていたり、そのような雰囲気の状況があっただけというものも含まれ、実際に文中のセリフで会話が交わされたとは限りません。
なので、会話のセリフと本人のイメージが多少違っている場合があるかもしれませんが、ご了承ください。(笑)
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